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2009/03/16

あのころが甦る! マンデリンの香りにのって

ちょっと、つぶやき。

新潟や青森にいると、私の場合、一番、困るのが生のオーケストラを聴けないとか、
映画観で映画を見られない(試写に行けない)とか、
ぶらぶら大きな書店巡りをして思いも因らないジャンルの本に出会えないとか、
そういう精神的な行動のほかに、もっと切実で、生活に即した「お困り」がある。

それは、コーヒーだ。

今でこそ、スターバックスが全国に広がって、深煎りコーヒーは市民権を得ているが、
正直、カタカナがわんさかつけられて、アレンジしたコーヒーよりも、
しっかり濃くて苦みがあって、味わいのある、ふつーのエスプレッソやフレンチやジャーマンタイプを、
さらりと静かなテンションでいただくのが好きなのだ。

んー。。。

学生のころ、私はアボカドが大好きで、オリーブオイルも大好きで、
でも何となく普通の近くのスーパーにはおいてなくて、
よくビンボーながら青山あたりを散策した。

確か、ベルコモンズにバラの香水の量り売りのお店が入っていて、
サンプルでもらうような小瓶を買って、
ブルガリアローズとかの香りを楽しんだ。
ハンカチにくるんで、安いビニール製のバックにしのばせておくだけで、
少しだけ、背筋が伸びて笑顔になるような気がした。

そのベルコモンズで、オリーブオイルも買った。
紀ノ国屋スーパーか、原宿駅近くの南国酒家あたりにあったオリンピアというスーパーマーケットで、
アボカドとか、輸入食品のきれいなのを物色しては喜んでいた。

そんなふうに、お金がないながらも、ぶらぶら歩いて、たまに善光寺さんにお参りしてみたり、
KAWAIミュージックショップで輸入楽譜の安売りをあさってみたり、
憧れのグランドピアノが置かれるショールームを歩いてみたりした。

いつだったか忘れてしまったが、そんなふうに歩きながら、表参道の路上でコーヒー豆を買ったことがあった。
よく手作りのアクセサリーや、絵や絵はがきなどを売っている人たちがいたが、
その人たちの並びで、敷物の上に豆を量り売りをしているコーヒー屋さんがあったのだ。

季節は覚えていないが、ちょっと顔にあたる風に冷たさが残っていた気がする。
コーヒーの香りが風にのって、なんだかとても贅沢な時間を生きているような気分だった。

私は、「マンデリン」を買った。初めて出会う豆だった。
どうしてマンデリンかというと、そのころの私は(今もだが)、とてつもなくバルトークという作曲家にはまっていて、彼の作品の中に「中国の不思議な役人」というのがあり、原題には「マンダリン」という言葉があった。マンダリン・・・マンデリン(笑)。バカみたいな単純な発想だが、鼻息荒く、バルトークの研究をしていた私は、その響きから離れられなかった。

バルトークは1882年に生まれ1945年に貧困のうちに白血病に冒されて、亡命先のアメリカで亡くなった作曲家で、私は、音楽学の卒業論文にもバルトークをテーマに選んだ。オケのパンフ作りにも参加しながら、恋するようにバルトークに接していた。

その「マンデリン」を買った夜、ひとりでワクワクしながら、丁寧にコーヒーをいれた。
私はコーヒーをいれるという行為が大好きだ。コーヒー豆を買うときの、コーヒー屋さんの匂いも好き。
挽いてもらうときの勢いのある匂いが飛び交うのも好き(今では、ドトールでイタリアンエスプレッソを挽いてもらうときの香りが一番好き)。

初めて口にするマンデリンは、本当に本当に本当に美味しかった。それまで飲んだ、どんなコーヒーよりも自分に合っている気がした。
小学校三年生のとき、父が初めてサイフォンを買って、家族四人で豆のコーヒーを飲んで以来、
我が家は、朝の一杯は全員がコーヒーだ。母もそうだ。父が他界したあとでも、朝食の前にコーヒーを飲み、そのあと緑茶を飲んでいる。
そのときのコーヒーも忘れがたい味だったが、
マンデリンは、自分から出会いにいった極上の味という気がした。

先日、ネットでコーヒーを買った。
これまでに何度か利用している澤井珈琲さんから買った。
こちらには「ベートーヴェン」という名前の深煎りのコーヒーがあり、
夫も私も気に入っている。ベートーヴェンは夫が最も好きだという作曲家。
私は、このコーヒーを飲むとき、ベートーヴェンの「田園ソナタ」(15番・ニ長調)が思い出される。

その「ベートーヴェン」目当てで買ったセットに「マンデリン」が入っていた。
表参道でのことを思い出したのだが、これまで何度か別のお店でマンデリンを試しては失敗している。
ハッキリいって、今回も期待していなかった。

・・・しかし。

なんとなんとなんと、あの思い出深い香りと飲み込んだあとに口の中に残る味わいが甦ってきた。
あのときの、あの学生のとき、お金がないながら、どうしても飲んでみたくて買った「マンデリン」。

オシャレな人々が行き交う場違いな表参道で買ってしまった、でも、それが運命の出会いとなったコーヒー。

そのコーヒーが、今になって甦ってきた。何十年ぶりの再会だろう!!

小さく感動。私だけの感動。

心の宝や思い出は、まだちゃんと生きていた。
どんな香り? と、聞かれても思い出せなくなっていた香りと味わい。
ようやく、ようやく、思い出せた。記憶の中のコーヒータイム。
あのころの自分が、湯気の向こうに見えるような気がした。

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コメント

 ドトールのエスプレッソは結構いけますよね。
 私も好きです。
 マンデリンは美鈴も美味しいですよ。
 イトーヨーカドー地下のお店は一杯売りもしていて¥210。
 バルトークと云えば“ミクロコスモス”ですね。
 私もピアノは弾けませんが楽譜を所有しています。

投稿: たかさごや | 2009/03/20 11:40

こんにちは〜 コメントありがとうございます!

マンデリンは当たり外れがあるという印象が強いです。
ドトールは、今のように店舗が増える前からのファンでした。
あの苦いコーヒーはカフェで飲むなら、一番だと思っています。
バルトーク。「ミクロコスモス」は幅広い層に受け入れられる作品だろうなと思っています。
私にとってバルトークは、宝物のような作曲家なんですよ。

投稿: みねあ | 2009/03/20 16:48

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