読書

2005/08/10

火の上を飛ぶお話し

 子どものときに読んだ本で、タイトルやら作者やらを忘れてしまったものがある。

 とても幻想的な本だった。多分、外国の児童文学というか童話だと思う。ずっとアンデルセンかと思っていたが、どうも、それもあやふやだ。

 物語は冬。
 雪の日、子どもたちが遊んでいると、新しい友達がやってくる。実は、その子どもは雪の精か何かで、寒くないと身体がとけてしまう。

 あるとき、子どもたちは、寒いのでたき火をする。そして、そのたき火の上を飛んで遊んでいた。子どもたちは次々と火の上を楽しげに飛んでいく。いよいよ、雪の精もどきの子どもの番となる。雪の精もどきの子どもは渋るが、他の子ども達に励まされ、勇気を出して火の上を飛んでいく。

 雪の精もどきの子どもは、溶けてしまう。子ども達は、驚き悲しむ。

 翌日は、快晴。ぽかぽか陽気に雪がしだいに溶けていく……みたいなお話しだった。

 このお話しの原作者や、どんな本に収められていたかなど、今となっては解らなくなってしまった。姉も、このお話しのことを覚えているらしいのだが、引越が多かった私たちは、多分、どこかで、この本を誰かにあげてしまったのだと思う。

 こんなふうに、忘れてしまった数々の名作が幾つかある。部分的にしか思い出せないものや、本の表紙の雰囲気しか覚えていないものもある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2001/07/23

最近読んだ本

嵐山光三郎「日本詣で」(集英社)
松井進「二人五脚」(実業之日本社)
大竹まこと「こんな料理で男はまいる」(角川書店)

 旅好きの私には、ぼんやりと都道府県の雰囲気や匂いをかぎ分けることがあって、特に県境などを通ると、理由もなくそのお国柄を納得してしまうものである。たとえば、故郷への帰省のとき。盛岡から特急の「はつかり」に乗り、青森県の野辺地駅へと向かうわけだが、二戸を過ぎたあたりから、ふつふつと青森県の空気を感ずるのである。それが旅ともなれば、更に個人的な思いこみが強くなる。奈良はここ、岡山はここ、徳島はここ、京都はここ……。自分の中で、その土地の風景と匂いがデフォルメされて固定化する。すると他人の固定観念を覗いてみたくなる。そこで私は、嵐山光三郎氏の「日本詣で」を手に取った。著者の多彩な旅の経験が、お国柄などという陳腐なものてなく、個人的な体験や個性的な知り合いを通して生き生きと自由気ままに描かれているのである。この本のどこかに、ムフフと共感できる瞬間がひそんでいる。私が大笑いしたのは京都。何となく判る気がする、そんな感想があちこちから聞こえてくるような気がする。
 「二人五脚」は泣いた。淡々と美化することなく、アイメイト(盲導犬)との生活を綴る著者が、いかに友達としての盲導犬・クリナムを愛していたか、素直にストレートに感動することができた。表紙は点字でも描かれている。普段の生活で、目の不自由な人を見かけたときにどのように接したらいいかも書かれている。このような本を、一人でも多くの人に読んでいただきたいと心底思った。
 芸能人の大竹まこと氏の料理の本ということで興味深く拝読した。健康ブームに乗っ取ったカロリー表示などを一切せず、ボリュームある簡単なメニューを紹介してある。素人なら素人なりの料理を奨励するあたり、独身の老若男女の役に立ちそうな本である。トマトに砂糖をかけて冷やすメニューが載っていたが、実は、私の祖父が家族の反対を押し切ってトマトに砂糖をかけて食していたことを思い出した。祖父だけが異端ではなかったのだと驚いたが、醤油を冷蔵庫に入れるのを批判されることには意義がある。青森県には「りんごだまり」という醤油があるが、これは冷蔵庫に入れないと腐ってしまう。著者本人に伝えたいとは思えども、ちょっと怖いし……。
 以上、最近読んでみた本の簡単な感想です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)